■第14話「ちーママ奮闘記(2007.7.15〜2007.7.26)全12話

第一章『初めての赤ちゃん』

山に囲まれ、周りは自然がいっぱいの広い敷地の真ん中に、大きな家が一軒建っている。同じ敷地内に、おばあちゃんの住んでいる家も、建っていた。

2軒の家がスープの冷めない距離にあった。このような雄大な自然に包まれて、家庭のドラマが始まった。

この大きな家に、初めての長男が誕生した。家族も親戚も大喜びだった。「なんてかわいい顔をしているんでしょう!」「賢そうな顔だねぇ」誰もが、初めての赤ちゃんに感動しながら、じっと赤ちゃんを覗き込んだ。

ちーママも、みんなにそう言われて、誇らしげだった。赤ちゃんは、よし君と呼ばれて、みんなから可愛がられた。言葉を覚えるのも早く、一歳三か月で「じいちゃん」とはっきり言えるようになった。

じいちゃんの顔は、一瞬でほころび「おーおー、これでこの家の跡取りもできた!でかしたぞ〜」と一人で、手を叩いて喜んだ。今は、天国だが、この頃は、まだ元気なじいちゃんだった。

ちーママは、育児に真剣だった。ベビーマッサージ、日光浴、絵本も毎日のように読み聞かせた。

積み木も上手に出来るようになり、新しい言葉を覚えると、それを上手に使い、周りを驚かせた。

若いパパとママは「うちの子は、天才だ」と思い込んだ。おじいちゃんもおばあちゃんも「さすがうちの孫じゃ」と喜んだ。

幼稚園も小学校も順調に進み、選手リレーに選ばれたり、応援団でも大活躍した。勉強もよく出来て、ほとんど100点だった。

パパも、ママも「なかなかやるねぇ〜」と文武両道の長男に大きな期待をかけた。

その間に、弟と妹が生まれていた。ママは、どうしても、長男に期待をし、力を入れ込んだ。

ところが、中学に入学したよし君は、次々に事件に巻き込まれ、ママを泣かすことになった。

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第二章『先生不信』

よし君は、両親の期待を背負いながらも、スクスク育っていった。

ところが、中学校に入学して間もない頃、いじめ事件が起きた。担任の先生が「これから、用紙を配りますので、本当のことを書いて下さい」と言いながら、話が続いた。

「A君がとか、B君とかが、◯◯◯しました。ではなくて、ちゃんと実名を入れて、本当にあったことを、そのまま書きなさい」と、大きな声で言った。

先生の話を聞いて、クラス全体がざわめいた。ひそひそ話も始まった。先生は、だんだん感情的になって「この学年は、どうなってるんだ。静かにしなさい。早く書け!」と怒鳴った。

楽しかった小学校生活とは、全く雰囲気が違っていた。よし君は、家でお父さんに、大声で怒鳴られたことがないので、びっくりした。

「書けた人から持って来なさい」と言われたので、出来た生徒から先生に渡した。「これは、決して、公表しない」と言われたので、みんなほっとした。

翌々日、信じられないことが起きた。何と生徒達が書いた作文が実名入りのまま、コピーされ、保護者に渡されたのだ!あれだけ「公表しないから〜」と先生は言ったのに〜。

生徒達は、先生不信に襲われた。「もう、先生なんか信じるものか」と心が、打ち砕かれたのだった。

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第三章『ゴミ箱』

中学一年のよし君のクラスは、大揺れだった。 生徒も、保護者も火山が爆発したように、驚き、地震のように、揺れた。

職員室は、抗議の電話の応対に追われた。よし君のお母さんにも、同じクラスの保護者から電話が入った。

「もしもし、担任の先生からの通信読んだ?」「えっ、知らないわ!何かあったの?」と聞いた。「今ねぇ、いじめ事件で、クラスが大変なのよ」と興奮しながら、話し始めた。

「よし君も、先生から親に渡すように言われて、通信をもらっているはずよ」「どんなことが書かれていたの?」とドキドキしながら聞いた。

ちーママは、自分の耳を疑った。「実はね、あんたんちのよし君の名前も書かれているよ!」 「うちの子が?まさか〜」と血の気が引いてゆくのを感じた。

電話が切れたので、すぐに長男の部屋へ走った。もう中学生になったんだからと思い、目を離していたのかもしれない。

パートで働いていて、毎日が、時間との戦いだった。息子は学校へ行っているので、今はいない。部屋中探し回った。通信はどこにもなかった。あきらめかけたその時、目の前にゴミ箱が〜!「あっ!まさか〜」クシャクシャにして、通信がゴミ箱に捨てられていた。ちーママは、ゴミ箱の中から、通信を取り出し、震える手で開いた。

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第四章『反抗期

ゴミ箱から、取り出した通信を読みながら、顔は青ざめ、頭はカッカとしてきた。確かに電話のとおり、よし君の名前も書かかれていた。

「あんなにかわいがって一生懸命育ててきたのに〜どうして?みんなに良い子だと言われてきたのに〜どうして?」色々な想いが頭を駆け巡り、いつしか涙がポトポト落ちて来た。

長男が、学校から帰ってくるのを待ち構えていた。「ただいま!腹減った。何か食い物ある?」と冷蔵庫を開けようとした。

ちーママは、答えようともせず、イライラしながら「ちょっと来なさい!聞きたいことがあるから〜」と怒りながら言った。

よし君は「何だかいつもと様子が違う」と思いながら「やばいな」と心の中で思っていた。「そこに座りなさい!」学校から帰ったばかりで、クタクタのよし君はふて腐れた顔で、母親を睨み付けた。

「何ていう顔をしているの。学校からの通信をゴミ箱に捨ててどういうつもりなの?」と、怒りながら、強い口調で話した。

よし君は、何を聞いても黙っていた。そのうちに、キィキィ声で切れている自分が情けなくなり、シクシク泣き出した。その様子を見て、「ごめん…」とポツリと謝った。その言葉を聞いて、ちーままは「ワー!」と泣き出した。こうして、よし君の反抗期が始まった。

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第五章『先生不信』

いじめ事件の真相は、詳しくわからないままだった。学校から、親の呼び出しはなかったので、よし君は、いじめグループではなかったようだ。

名前が書かれたのは、事実だったので、「もう、こういうことは、しないで!」と注意をした。何も言わず「うん」とたった一言呟いた。

ただ、よし君の心に、担任に対する不信感が芽生えた。「名前は、公表しないから」という約束が破られたことが、心に残った。

中学2年生の時にも、「先生不信」に陥った。体育の若い先生による「盗撮事件」が起きたのだ。思春期を迎え、デリケートな成長期に信じられないことが起きた。

女子の更衣室に盗撮する為のカメラが見つかった。何と、この中学校の新婚の男性教師が、警察につかまった。

新聞にも出て、その教師は、懲戒免職となった。学校も生徒も保護者も騒然となった。

またもや、「教師不信」となってしまった。

中学校に入学して、頑張ってゆくだろうと思っていたのだが、次々に色々な事件が降りかかって来た。ちーママは、心穏やかに過ごせる日がなくなってきた。

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第六章『荒れる学年』

「先生を信用してたのに、何や、先生俺たちを裏切って!」色々なことが重なって、生徒達の先生に対する不信感がつのっていった。

だんだん雰囲気が悪くなり、学年全体が荒れ出した。

ある生徒が、学校へスタンガンを持って来て、ある子をターゲットにグループを組んで、いじめた。その子に水をかけ、その上、スタンガンで電気ショックを与えた。

学年主任の先生は、「この学年は大変です。次々問題を起こします」と頭を抱えて、保護者に話した。

「大変だ、大変だ。困った、困った〜」と責任ある先生から、呟かれたので、それを聞いた保護者に「大変病」が伝染してしまった。

家に帰った母親が「うちの子の学年は、大変らしいわ。うちの子大丈夫かしら?」と父親に話す。

詳しい状況を知らない父親は、母親の口を通して学校の様子を知る。両親の会話を聞いていた子供は、更に学校不信で、心を痛めた。

母親から聞いた話を鵜呑みにして、短気な父親は、学校へ電話をする。更に先生は、「この学年の親は大変だ」と思い込み、悪循環した。

先生と生徒、生徒と親、親と先生、それぞれ信頼することができなくて、混乱した。よし君も、中学生活は楽しいはずだったのに、肝心の勉強にも身が入らなくなってしまった。部活にも、勉強にも集中出来なくなって、結局、ゲームに夢中になってしまった。

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第七章『姑と小姑』

ちーママの涙には、長男のことの他にもあった。途中同居だった為、ライフスタイルの違いによって起きるさまざまな嫁姑のトラブルが起きていた。三人の子供達も、転校でそれぞれがストレスを感じていた。

舅が、入院中は、主人の姉も妹も協力してくれていた。ところが、舅が亡くなってから、色々な問題が起きた。姑が転んで肘を怪我した時のこと。パパが病院に送ってゆこうと準備をしていたのに、姑はすぐに娘に電話をして、病院へ行ってしまった。

同じ敷地内に住んでいるのに、姑の行動に、ちーママとパパは「どういうつもりなんだろう?」と、首をひねった。車で5分くらいの所に、義妹が住んでいるので、すぐに駆け付ける。そして、毎日のようにやって来る。離れに姑がいるので、本宅の方に「こんにちは」の挨拶もない。小姑の車が止まっていると、何故だか、ちーママの心が重くなり、沈んでいった。

姪が、2泊三日で泊まりに来た時も、何の挨拶もない。ちーママは、堪り兼ねて、姑に言った。「どうして、こんにちはとか、おじゃましますとか、ゆかちゃんは、挨拶に来ないんですか?高校生ですよ。」と聞いた。

姑は「親の躾が悪いんやわ」と答えた。「親の親はあなたでしょう!あなたが教えることよ」と心の中で叫んだが、その時は、何も言えなかった。

そのことを仕事から帰って来たパパに言った。
「お前の気持ちはわかった。僕からおふくろに話すから〜」と言われたのでスッーとした。

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第八章『自分が変わる

ちーママは、思うようにいかないことばかりだと感じた。

パパに話すと、その時は、味方になってくれたような気がして嬉しいのだが、結局は、母親や妹の肩を持っている。

「まあ、そんなこと言うなよ〜話しておくから〜」と言うのだが、なかなかうまく話せない。

自分がシクシク泣いていては、3人の子供をちゃんと育ててゆけない。

次男ゆう君も、引っ越しによる精神的ストレスがかかって、自家中毒になってしまった。小学校に入学して、厳しい担任に当たり、体調を崩して学校を休んだ。一番下の妹のももちゃんも、引っ越しで幼稚園が遠くなってしまった。

幼稚園バスが、迎えに来てくれるので、そのまま変わらないことにした。だが、家から毎日、1時間くらいバスに揺られて登園することになってしまった。そのバスの中で、いじめられていた。担任の先生と相談をして、引っ越し先近くの幼稚園に変わった。

ちーママも、三人の子供達も、毎日、クタクタになってしまった。ちーママは、環境の変化と同時に、自分自身も変わらないと、やっていけないことに気付いた。
そして、決心をした。「運命は、自分が切り開こう。シクシク泣くのではなく、強くなろう!」と。

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第九章『行動する

ちーママは、行動することにした。同居することになった実家は、山と川に囲まれた田舎だった。

若い頃に、東京に住んでいたこともあって、思ったことは、ちゃんと言える方だった。

結婚して同居してからは、我慢して言いたいことも言えなくなって、涙もろくなっていた。そんな自分を反省した。

学校に対して、意見があっても、発言する人は少なかった。そこで、PTA役員を引き受け、地域の中にも積極的に入って、自分自身の友達も探した。役員をやっていく中で、だんだん親しい友人も出来た。そして、先生ともコミュニケーション取れるようになってきた。

ある友人から、ミニバラのことを聞いて、コラージュセラピーに興味を持った。

そして、家族全員でミニバラと関わることになったのだ。この時は、長男の受験問題、父親と息子の関係、嫁姑問題で頭がいっぱいの時だった。

コラージュ作品が早く出来た父親と中3の息子が外で、バスケットを一緒にやり始めた。

部屋から、その様子を目にしたちーママは、ハンカチで涙をそっと拭いた。「どうしたの?」と私が尋ねると「ゲームばっかりやって、ちっとも勉強やらない長男に、パパから注意してもらったんです。それから、息子が、父親と話さなくなってしまったの。こうして、一緒に遊ぶ姿を見るのは、何年ぶりでしょう〜」「そうでしたか?うれし涙なんですね」と、私ももらい泣きしそうになった。

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第十章『笑顔』

バスケットボールを父親と一緒にやったり、家族と一緒にコラージュをやったりしたことによって少しづつ笑顔が戻った。

外を見つめていたちーママも、涙を拭いて笑顔に変わった。この頃から、家庭が明るくなって来た。

母親として、愚痴ばかり言っていないで、思った通り行動してみようと決めた。

まず始めたのは、掃除だった。朝早く起きて、バス停とよし君が行きたいと思っている高校の門の前を掃除することにした。

朝4時に起きて、毎日続けた。冬は真っ暗なので、怖いから小6のゆう君を連れて行った。

「ゆう君、起きて!」と言うと、パッと起きて、服に着替えて車に乗った。車が走りだしとまた眠ってしまう。でも、ゆう君がいてくれたので、バス停と高校の周りを掃除出来た。

「よし君の為に、子供の為に」と頑張った。夜が明ける前から、頑張った。掃除をした後は、気持ちが良くて、心が落ち着いた。

お母さんの心が落ち着いてきたら、友達も増えて来た。姑や小姑にも、言うべきことは、きちんと伝えるようにした。姪も、おばあちゃんの所に遊びに来た時には、ちゃんと挨拶にくるようになってきた。

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第十一章『変身』

中学3年生のよし君は、受験生なのに、なかなかゲームを卒業できなかった。ガミガミ言えば言うほど反抗してくる。イライラすると、壁に怒りをぶつけた。弟と妹がビクビクしていた。

ちーママは、自分が変身しなければならないことに、気付いた。まず、夫婦仲良くしようと思った。イライラして、パパに当たったり、嫁姑問題の愚痴も言った。

三人の子供をちゃんと成人させるには、夫婦が二人三脚で協力していかなければうまくいかないことに気付いたのだった。

ある朝のこと。超まじめなパパが、朝食のパンの耳をハートの形にして、ちーママのお皿にポンと乗せた。突然のことだったので、ちーママは「なあに?」と言ってお皿をみた。パンの耳ハートを見て、目が点になり、びっくりした。

でも、嬉しくて思わずにっこりして、パパの方を見た。お互いに目が合って、にっこり!

その様子をじっと見ていたよし君が、照れくさそうににっこり。ゆうくんも、ももちゃんもにこにこ顔になった。

シクシク、ガミガミちーママが変身して、にこにこママになった。イライラ家族がにっこり家族に変身した。

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第十二章『戯れ合う』

よし君は、ゲームをやりながらも、高校進学のことが気になってきた。二学期に入り、具体的に決めなければならない。マイペースな彼も、少しあせりを感じながらも、母親に言われるとむかついた。

猛勉強までは、できないけれど、それなりにやるようになった。そして、将来のことを考えて、父親の母校に決めた。

パパは、喜んでいた。家庭の中が落ち着いてきた。よし君は、見事、希望校に合格した。家族にとって、初めての高校受験だったので、喜びに満ち溢れた。特に、ちーママは、色々なことを思い出して、胸がいっぱいになった。

今、まだ子育て進行中だが、三人とも大きく成長してくれた。長男よし君は、大学生となり、就職活動中。次男も希望高校に進学し、今年は、大学受験の為に毎日、猛勉強している。末っ子ももちゃんは、中学三年生で、高校受験の為に、塾に通っている。

ちーママも、三人の子供達のこれからの学費の為に、仕事を変えて、以前より、長く働いている。

毎日、姑のところに来ている小姑のことが、気にならなくなってきた。彼女の車が止まっていても、腹が立たなくて「姑の世話をしてもらってありがとう」という気持ちに変化した。

パパが、次男の毎日の塾通いを手伝ってくれるようになった。仕事から帰ってくると「さあ、行くぞ〜」と言って車で送ってゆく。

パパは、朝5時45分に起きてパソコンチェック。6時に朝食、その後、一休みしてから会社へ行く。朝ご飯が終わってから、ももちゃんと戯れ合う。

「何やこの腹は?」と、ももちゃんが、手で触ると、パパは苦笑いしながら「うるさいなぁ〜」と言う。テレビの前で、中3の娘と父親が戯れ合う姿を見て、ちーママは嬉しそうにじっと見ていた。

自分の少女時代には、考えられない光景だった。父親が厳しくて、そばに座った思い出はなかった。今年は、三人共、大きな試練を超えなければならない。楽しそうな家族を見ていると、何とか乗り切れそうな気がして来た。

我が家は今日も、ハードルを超える為に、それぞれが暑い夏に燃えている。

きっとんとん〜さあ、頑張ろう〜ちーママ奮闘記おしまい

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