■第12話「不思議少年A(2007.6.8〜2007.6.19)全11話」
第一章『光る石』
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緑の山々に囲まれ、美しい川が流れている側に一軒の家があった。そこに、一人の男の子がいた。家の下の川で遊び、山の中で友達と遊び回る元気な子だった。
ある日、友達と一緒に川で遊んでいた。その時10歳のわんぱくざかりだった。川の中で小さな綺麗な石を見つけ、右手を高く上げて太陽の光に当てながら、見とれていた。
突然、友達が「わっ」と言って背中を押した。驚かすつもりだったそうだ。押された拍子に、手に持っていたキラキラ光る小さな石が、男の子の口に入ってしまった。背中を押されたショックで、何と男の子は、その光る石を飲み込んでしまったのだ。
「わっ、どうしょう、石を飲み込んでしまった」と思ったが、何故かその事を言えなかった。
友達を怒ることもできなかった。
それ以来、不思議な事が起きてくるようになった。亡くなった人の姿が見えたり、動物の霊が見えたりするようになってしまった。遊んでいても突然、「あそこに人が見える!」と言ったりしたので、友達が変に思うようになってしまった。だんだん一緒に遊ぶ子がなくなった。
それから、その男の子は「不思議少年」と呼ばれるようになった。
この物語は、こうして始まった。
不思議少年の家族は、祖父、祖母、父、母、兄の6人家族だ。父は自営業で母は父の仕事を手伝っていた。兄は、6歳年上で、不思議少年をかわいがってくれていた。
だんだん友達と遊ぶ事がなくなり、家にこもってゲームに夢中になっていった。お母さんは、心配でたまらなかった。
友達と関わることが少なくなった不思議少年は、だんだん家にこもるようになってきた。
小学校低学年までは、がき大将だったのに、誰とも遊べなくなってしまった。少年のことを考えるとお母さんは、途方に暮れた。
やっとの思いで小学校に行くと「お前、なんでいるんだ」と言われたり、女の子からは、叩かれたりした。みんなは、ストレスを少年にぶつけているような気がした。不思議少年は、先生にも、友達にも、学校にも馴染めなかった。
お父さんとお母さんは、この子の将来を不安に思った。少年が、小学校5年生になった時、この子を家から離して生活させてみようと考えた。
家族で相談し、少年に「沖縄山村留学」のことを話した。不思議少年は、未知なる世界へ、飛込む決意をした。
「お父さん、お母さん、おにいちゃん〜、いってきます」と元気よく、家を出ていった。
沖縄では、留学先のお父さんとお母さんが、優しかった。一緒に生活したのは、中学3年生の男子だった。一度に、兄が二人出来たような気持ちになった。ひとつの部屋に、三人が兄弟のように暮らし、かわいがってもらった。
小学校も楽しくて、一年間があっという間に過ぎ去った。時々、故郷のお父さんとお母さんが、会いにきてくれた。ホームシックにかかることもなかった。
不思議少年は、沖縄を愛し、ここでは、全く普通の小学生になっていた。自然の中で友達といっぱい遊べた。
この家には、いろいろな人々が訪れるので、だいぶ人に慣れて、話せるようになってきた。
沖縄山村留学を終えて、故郷に戻り、6年生に進級した。何とか無事、小学校を卒業した。
中学校に入って、宿泊研修があった。その時から、また、いじめが始まった。
「なんでお前がおるの!出て行け〜」と言われたり、イカダからは突き落とされた。「こんな事されてまで学校に行きたくない」と思うようになった。
その日から、再び、不登校が始まった。
不思議少年は、不登校になり、ゲームに夢中になっていった。月日はどんどん流れてゆく。
お父さんも、お母さんもまた、だんだん不安になってきた。特に、お母さんは、「心身ともに健康に」と、食事に気をつけたり、色々な学びに懸命だった。
そんな状態の時に、ミニバラの塾生が大学生となって、この不思議少年の家庭教師となった。
なみちゃんは、小学3年生からミニバラに関わってきた。はきはきして、明るくて、誰からも好かれる女の子だった。勉強もよく出来て、進学校から教師を目指して大学生となっていた。そして、お母さんに頼まれて、不思議少年の家庭教師となったのだった。
なみちゃんは、お母さんから事情を聞いて、私に電話してきた。
「もしもし、不登校の子の家庭教師になったのですが、どのように接したら良いのでしょうか?お母さんが、とても苦しんでいらっしゃいますので、先生のことをお話してもいいですか?」
「もちろん、いいよ。もし、良かったら私の講演会にきていただいてもいいよ。」と答えた。
お母さんは、私の講演を聞いて、涙を流されたそうだ。数日後、お母さんは、この不思議少年を連れて、ミニバラを訪れた。
なみちゃんの紹介で、初めて、不思議少年とお母さんがミニバラに訪れた。お母さんは、今までの経過を話された。
「ありがとうございました。彼は、もう中学3年生ですので、これからは、自分で話してもらいます。終わる頃に電話しますので、迎えに来ていただきますか?」
「はい、わかりました。また迎えにきます」
しばらく、不思議少年は黙っていた。私が何者かを探っているようだった。「安心していいよ。私は怪しいものではないよ。子供達が幸せになれる道を探しているの。あなたの道を一緒に探そうね。私は、基本的には、子供がいうこと信じるよ」と不思議少年に言いました。
すると、突然話し始めた。学校でいじめられたこと、沖縄山村留学のこと、家族のことを次々話し始めた。信じられないくらいたくさんのことを話してくれた。
霊の話までしてくれた。このミニバラは、柳の下に立っている女神さまに守られていること、私のそばに白蛇がいて、私を守ってくれているという。
私は、「うん、うん、そうなの」と聞いていたのだが「白蛇が〜」と少年が言った時「えー!」と思わず叫んでしまったのだ。
私は、不思議少年に「白蛇がそばにいて、見守っている」と言われて驚いた。
実は、一週間ほど前に、義父のお墓を掃除していたら、目の前に白蛇がいた。しばらくじっとしていて、ゆっくりと山の中に消えていった。
生まれて初めて白蛇を見たので、怖いというよりも、その姿の優雅さにうっとりした。帰ってすぐに、義母に白蛇の事を話した。
以外にも落ち着いた口調で「お父さんがあなたに会いたくなって、白蛇に姿を変えて出て来たんだよ。きっとね」と笑いながら話した。
「えー!そんなことあるのかしら?」と不思議に思った。
同じことを主人にも話したら、不思議にも義母と同じことを言った。
義父の法事が近付いていたので「なるほど」と思った。
私はこの出来事があったので、彼の言ってることを、そのまま信じることが出来た。
不思議少年は、私をじっと見て「白蛇が元気がなくて、くたばっているから、今度は、先生を川へつれてゆくね」と言った。「守る力が弱まると、先生が病気になるから」と教えてくれたので思わず「連れて行って下さい」と言ってしまった。
夜の8時から休むこともなく、夜中まで話し続けた。その顔は輝いていた。
不思議少年は、私を守っている白蛇が元気がないからと言って、川へ案内してくれた。少年が住んでいる所は、美しい山々に囲まれた静かな環境だった。
家のすぐ下に、川が流れていた。川底が見えるほど、水が澄みきっていた。下に下りるのが大変だった。少年は、猿のようにスルスルすばやく下りて行った。
「ちょっと待ってよ。怖くて下りて行けないよ。高いから下を見ると、足が震えてしまうよ」と川に下りた少年に聞こえるように、大声で叫んだ。
「分かったよ。すぐ行くから動かないでね」と言ったかと思ったら、ひょいひょいと上がって来た。
「あんたは、人間じゃあないみたいね。ターザンかチンパンジィみたい〜」と言ったら、笑い出した。
「危ないから、僕に掴まって〜さあ、手を出して〜」私は言われるままに手を出したら、ギュッと握って「下を見ないで〜」と言われた。
まるで、私が子供で少年が大人のように思えた。自然児で、生き抜く頼もしさを感じることができた。「向こう岸に渡るから、水の流れに足をとられないで〜」と注意された。川の水が胸の辺りまできていたが、少年がしっかり手を握ってくれていたので、怖くなかった。
やっと目的地についた。「さて、これからどうやって、くたばった白蛇を元気にするのかしら?」と思いながら、少年の指示を待った。ドキドキしながら〜。
不思議少年は、長い棒を持ったまま、川の流れをじっと見つめながら立っていた。
「ねぇ、何しているの?」と聞いたら「水龍が川を泳いでくるから、そのバワーを白蛇に入れるんだよ」と答えた。
「いつ、くるの?」「わからないよ」
「ちゃんと水龍がこの川を通るの?」
「わからないよ」と首を横に振った。
「いつ来るのかわからないのに、ずっと待ち続けるの?」「うん」と頷いた。
真剣に川を見つめる不思議少年を見た時「信じて待とう。いつまでも〜」と川原に腰を下ろした。こんな経験は初めてだからドキドキしていた。
3時間くらい経った時、妹から携帯に「台風が近付いている」と電話があった。私は、驚いてすぐに、少年に伝えた。
「分かったよ」と頷いたが、身動きしなかった。
私も、待つしかなかった。すると、突然、持っていた棒がピクッと動き、少年の頭がカクッと下を向いた。一瞬のことだった。不思議な光景だった。そういえば、この川は5年前に、少年が小さな光る石を飲み込んだ川だ。それから、霊が見えるようになったということを思い出した。
「どうしたの?」「今、水龍が通ったよ。だから、白蛇も、元気になったよ」とにこやかに答えた。不思議なことに、メルヘンのような世界だった。
「もう、大丈夫だから帰ろう」と言って、私の手を引いて、急流を渡った。水の流れの強さに揺れながら、何とか無事に目的地に着くことができた。
深い川を不思議少年に、手を引かれながら、川原まで辿り着いた。ほっとしたら、台風が近付いてきて、雨が降り始めた。
「台風が来るから急ぎましょう」と言うと「うん」と少年は頷いた。
「あそこで手を洗って、口をすすいで〜」と小さな声で言った。言われた通りにやったら、なんだか頭も身体もスッキリして来た。身体から元気パワーが出て来たような気がした。
ふと横をみると、、赤い実をつけた野いちごがいっぱいあった。
「ねえ、あの美味しそうな野いちごを塾生の為にとってもいい?」と聞くと「いいよ。どうぞ〜」と言ってくれた。
喜んで「じゃあ、幼稚園の子と、小学生の子に持っててあげよう」と言い、鼻歌を歌いながら野いちごを摘んでいた。雨が少し降っているのに、全然気にならなかった。
その様子を楽しそうに見ていた少年は、突然、私に話しかけた。
「あのね。もうすぐ小鳥が餌を探してここに来るから、少し野いちご残しといて!」と頼んだ。
「あら、そうなの。小鳥さんの大好物だったのね」と答えてから、野いちごを摘むのをやめた。
「ありがとう。もうすぐ腹ぺこになって飛んで来るよ」と言った。
この子が不登校になっているのがわかるような気がした。今日一日、不思議少年とずっと一緒に行動していたら、私自身がどんどん元気になってきた。不思議少年は、大いなる自然の恵みを大切にしている心優しい少年だった。
不思議少年は、大切な忘れ物に気付かせてくれた。不思議な体験を味わった一日だった。
心優しい少年は、なかなか学校に向かう気力が出てこなかった。カーテンを閉めて、一日中ゲームにひたりきっていた。
家庭教師のなみちゃんが来る時だけは勉強した。なみちゃんには、何でも話すことができた。
顔も、少しづつ良くなり、喜怒哀楽も表現できるようになっていった。部屋のカーテンも、あけれるようになってきた。
教室には入れなかったが、保健室登校出来るようになってきた。そして、ミニバラのイベントに参加して、男の子にも女の子にも話せるようになったのだ。
不思議少年は、だんだん霊的なことを話すことも少なくなった。よく笑うようになり、高校に行きたいと思うようになった。お母さんの顔も明るくなり、笑顔が戻ってきた。
勉強も、やっとやる気になってきた。
少しづつだが、不思議少年は普通少年に変わっていった。小学生の頃は、白いモヤッとしたものが見えるようになり、だんだん亡くなった人の霊が見えるようになっていた。
遊んでいて、小鳥や犬の霊も連れて帰ったこともあるという。私は「どうしてそれが霊だとわかるの?」と聞いた。少年は、本物は抱くと体温があるが、霊は体温が無かった」と答えた。
信じられないような話だけど「なるほど」と思った。少年は、だんだん体調が悪くなったので、普通に戻ろうとコントロールするようになっていた。
成長していく中で、自分自身がうまくコントロール出来るようになった。そして、霊がついに見えなくなり、やっと、普通少年になった。
高校生になった時、ネットゲームをやって、仲間が出来た。学校より楽しかった。「なんで、こんな時間にゲームやってるの?学校は?」と聞かれ「学校休んだの。いじめられてるし、なんで高校に行かなければならないかわからないんだ」と答えた。色々悩んで、高校を休学していた。
28歳のその青年が「高校の勉強は、何の役もたたんけど、基礎学力がつくから、進路を変更する時に役に立つよ」と教えてくれた。インターネットでいい人と巡り合った。何でも話せた。ネット社会に入り、世界が広がった。
私は、少年の話を聞いて、インターネットの世界も、うまく利用すれば、素晴らしい世界なんだと知った。
こうして、不思議少年は、高校に復学して卒業することができた。友達も出来て、現在は料理人になる為に、専門学校で学んでいる。
先日、スーパーでお母さんとバッタリ会った。明るい笑顔で「息子が不登校だった頃の苦しみが嘘のようです」と言われた。子供は、一日一日成長し、輝ける存在だとしみじみ感じた。
きっとんとん〜あれあれ普通少年になっちゃた〜不思議少年おしまい(^-^)v
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